2011年12月14日水曜日

きちくまの2011年ベスト・アルバム30選  その1 #30-21

気がつけば2011年も終わろうとしていますが、12月に入って貯金残高がとんでもないことになりCDとかレコードとか買ってる場合じゃなくなってしまいました。これから新しい音源と出会うまえに来年を五体満足で迎えられるかも怪しくなってきており、さっさと年間ベストも片づけて、思い残すことのないよう腹いっぱい風俗に通ってから死にます。俺達いつまでも悲しみ集めるルンペン(中野サンプラザのライブもスカンピンで行けなかったですけど、お疲れ様でした)。

先に書いとくと、(自分は例年そうなんですが)ポップでわかりやすいものと、わかりやすく変なものを中心に聴いてました。話題のあの本の影響もあってヒップホップも自分なりに楽しんだ一年でしたが、リリック聞き取れないし門外漢だしタイラーザ以下略の顔が怖いので外しました。ひとりで30枚も選ぶのは自意識過剰ですよね。わかってるんです。定額料金の底なし娯楽がインターネット。どうか見逃してやってください! 殴らないでください! うー、こうなったら不労所得ライフで三億円GETや!

※[アーティスト名] / [アルバム名]
※実際の曲をチェックできるよう文章の最後にリンクを貼りつけましたが、文中で貼っている場合は省略している場合もあります。また、ここで表記を統一すると面倒なので元々の動画のタイトルをそのまま掲載しています。悪しからず。

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30.V.A. / Red Hot + Rio 2
定番となったエイズ撲滅のためのチャリティー・コンピ・シリーズの最新作は、収録曲のオリジナルと特設ページ(の下のほう)に目を通せば60年代ブラジルのトロピカリア・ムーブメントについてあるていど知ったかぶりできてしまうほどの充実盤。ベイルートやオブモンなどインディーキッズ御用達のビッグネームも名を連ね、当時の生き証人たちとコラボを楽しむさまもユニークだが、その背後にはデヴィッド・バーン(Luaka Bop)やベックが歩んできた道があることも昔の曲を収録することできちんと示しており、トロピカルな音がクローズアップされがちな昨今の潮流を考えても自覚的で意義のある編纂。そういえばトン・ゼーの1stも今年再発されましたね。あと個人的にはヒタ・リーのこのアルバムも大好き。
◆03 Um Girassol da Cor do Seu Cabelo Mia Doi Todd & José González

29.The Sandwitches / Mrs. Jones' Cookies

ジャケ左の女性の髪形がイデオンの主人公みたいになってて発動編って感じがしますが(実物は全く違うし、案外歳食ってるけど)、これは元フレッシュ&オンリーズの人とかによるサンフランシスコの女性三人組による二作目のフルアルバム。おどろおどろしく奇怪なムードを演出するエコーに、神秘と素っ頓狂のあいだをゆく歌声やコーラス、USローファイ勢のなかでも群を抜いてヨレヨレの不思議アシッド・フォーク。マジカルだったりオカルトチックだったりするところはプログレ好きにまでアピールしそう。最近もこういう格好してるんでしょうか。本作もこれまでもジャケデザインがエクセレント
◆The Sandwitches- Lightfoot


28. The One AM Radio / Heaven Is Attached By A Slender Thread

かつて暗く厳かなラップトップ・フォークを得意としたインド系アメリカ人のリシケシュ・ヒアウェイは、本作でバンド・スタイルに転じ、奔放なビート・メイキングと持ち味のメロディセンスで、これまでとひとあじ違う"夜の風景"の描写に成功。前作とジャケットを見比べればその違いは一目瞭然で、先日の来日公演も(モミアゲ込みで)すばらしかったBathsや、anticonのエイリアスも参加の清々しい良作。価値観が転覆したことで生じたであろう開き直りのよさが痛快だ。詳しくはクッキーシーンに掲載された拙レヴューをご参照ください。


27.Trampauline / This Is Why We Are Falling For Each Other
お世話になってる某レーベルの方に教えていただき、すっかり惚れ込んでしまった韓国の女性シンセ・ポップ・ユニット。フジテレビ叩きみたいな(双方が)虚しい出来事もあったが、いわゆるK-POPとは別の、かの国の魅力的なインディー・ポップの土壌が自分にもようやくうっすらと見えてきて(たとえばマックス・ツンドラや新年早々に来日予定のダン・ディーコンも招聘しているSUPER COLOR SUPER、プロダクション・デシネからもリリースされた秋休みや、ele-kingにレヴューの掲載されたVidulgi OoyoOだったり)、一度きちんと調査してみたい。彼女(たち?)に話を戻すと、この動画で一発ノックアウト。ゆるくやわらかい電子音と飾らない佇まい。白いスニーカーが眩しいよ。

26.LOVE ME TENDER / Twilight

最初に聴いたとき「七色の鍵盤を軸とした夢世界フュージョン。ロリな歌声まで入ってノスタルジーときどきサイケ」とツイートしたが、10月のおわりに下北沢で観たこのミニアルバムのレコ発ライブで驚いたのは、曲のバリエーションと展開の豊かさ(音楽同様にフリーダムな観客の内輪っぷりにもビビったが)。ポップスがもつべき捻りと威厳と茶目っ気への強いこだわりに感服。あと、特に3.11直後のしんどいTL上で高木壮太氏のツイートにだいぶ励まされたし、あれがなかったら正直聴いてなかったと思う。日本でもこの手の企画をやってほしい。やろうよ。 

25.Dreams / Feelings 4 U

LAを拠点に活動するビートメイカーJesse PimentaによるEP。bandcampのページでは"dopewave"や"sample-wave"なんてタグがついているが、音の雰囲気でいえば(いまやすっかり売れっ子リミキサーになった)Star Slingerの流れも汲んでいる。所属先のネット・レーベルAbsent Feverについては今年いちばん更新を楽しみにしていたこのブログの記事で知ったが、未来を期待したくなる秀作ぞろいで、全音源がフリー・ダウンロード可能($1払って購入することもできる)。ちなみに、ポルトガルにもDreamsというまんま同名のバンドがいて、こちらもチルウェイヴ以降なサウンドでよい! FreindsWeekendばりにややこしいぞ!
24.Oh Mercy / Great Barrier Grief

渋さや苦さも見せつつ、軽快なオールドタイミー・アコースティック・ポップを鳴らす豪メルボルンの4人組。バンド名からもどことなく香るディランチックというか生真面目なムードもよい(ダニエル・ラノワprod.のあのアルバム結構好き)。もうひとつ特筆すべきは紅一点ベーシストEliza Lamさんのすばらしいルックス。粒ぞろいの楽曲、味のある演奏がひたすら飛び出す好盤で、日本盤だしてくれてP-Vineありがとうです。オーストラリア産ではGotyeSeeker Love Keeperに、Oscar + Martinという2人組もよかった。南半球やばい。 見逃してちゃいけない。

23.Man Man / Life Fantastic
トム・ウェイツやケイト・ブッシュ、ウィルコ、ティナリウェンといった大御所のリリースを中心に、今年も元気だったANTI-に所属するアヴァンギャルド楽団による4作目のフルアルバム。ブライト・アイズ/Saddle Creek周りの辣腕マイク・モーギスをプロデューサーとして迎えて築き上げたサウンドは、この評曰く"Tom Waits circus - madhouse pop"。過去作にあった規格外の勢いはそのままに、うまく整頓された音はカラフルさもアップ。しゃがれ声で吠えまくる変調連発フェスティヴァルは万人にとってフレンドリーな形へと進化した。一見イロモノのようで、タイトル曲歌詞に明らかなとおり惨事にもユーモアで応えるタイプの誠実な音楽。すごくライブ観たいよ。


22.CocknBullKid / Adulthood

デヴィッド・バーンのこれミューのこれに通ずるものがあるジャケ…はちょっとキモイけど、ガーナ系イギリス人女性による、もしもしレコーズ印な弾けたパワフル・ポップな一枚。チリー・ゴンザレスやジョセフ・マウント(メトロノミー)などなどゲストも豪華で、自身初となるアルバムのタイトルに「成人期」なんてつけちゃうあたり乙女チック。まだ粗削りなところもあるが、伸びのある歌声が痛快で恰幅のよさにも無限の将来性が窺えるし、次の作品はとんでもないことになりそうで期待大。ジャネル・モネイとUKツアーを廻ったそうだが(ツーショットないかな)、アデルとも機会があれば1曲ヘヴィなデュエットをお願いしたい。


21.The Dø / Both Ways Open Jaws

フランスでは前作でアルバム・チャート一位も獲得している、ダンとオリヴィアの男女二人組(2人の名前の頭文字をとってDøってセンスも可愛い)。多幸感溢れる突き抜けっぷりを聴かせる「Too Insistentは今年随一の最強トラックだが、甘さ一辺倒ではなくフリークアウトした姿が本性…かと思えば華麗なオーケストラも鳴り響き、のどかでフォーキーな曲も収録されている。あふれんばかりの教養が見え隠れするゴッタ煮ぶりだが、クラシック、コンテンポラリー・ミュージック、チャールズ・ミンガスやフィーヴァー・レイ、ビョーク、ジョアンナ・ニューサムetc..から特に影響を受けている(みたいなことが、全曲試聴できるsoundcloudのページに書いてあった)。

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