2011年12月23日金曜日

きちくまの2011年ベスト・アルバム30選  その2 #20-11

20. Russian Red / Fuerteventura
現地でリリースされて全曲試聴を聴いたとき、スペインのミュージシャンってだけで日本盤を出さなきゃアホだろって内心思ってたんですが、ここにきてラジオではフエルテベントゥーラより愛をこめたパワープッシュ状態で、逆に来日公演を見逃してしまった俺が一番アホだったという結末に。ファイストもそうだけど、女性SSWの日本盤後だしリリースがこれからのトレンドなんだろうか。オトナの事情はわからないが、これはベルセバ人脈を従え一気に世界制覇をもくろんだ無敵艦隊のようなポップ・アルバム。でも名曲「Cigarettes」は録り直したのより元のシンプルなアレンジが好き。

19. YACHT / Shangri-La
ユートピア/ディストピア思想を題材につくられたコンセプト作。DFA移籍&女性ヴォーカルのクレアさん加入後のYACHTは、アホでキュートな作風と作品のクオリティーが理想的なバランスでたまらん。あの伝説のBlack Devil Disco Clubとの交流なども経てバンド・スタイルでつくられた本作は、冒頭二曲こそ威勢がいいものの神懸かり的な前作と比較するとややスケールダウンした印象。しかし、ラストのタイトル・トラックボンクラな歌詞("もしユートピアを建てたら、君も遊びにきてくれる?")も併せて泣けるし、なんだかんだ必聴。限定版のユルい宣伝ビデオも最高! チャットモンチー以来の傑作シャングリラだ。ラーラーラーラーラー♪

18. Noah and the Whale / Last Night on Earth

上半期に聴きまくったアルバムその1&青臭さオブ・ザ・イヤー。こちらもフジロックで観ることが叶わず残念だった。UKアンタイ・フォーク時代より、ダイナミックに飛躍したこちらが断然好き。ブルース・スプリングスティーンやビートルズの「Don't Let Me Down」を取り上げながら" And we'd sing and play / Simple three chord rock and roll "と歌う本作の象徴のような「Give it All Back」、薄暗い夜に少年は故郷を飛び出して、もう二度と帰らない「Tonight's The Kind Of Night」そして、まんまキンクス「Lola」すぎる「L.I.F.E.G.O.E.S.O.N.」! ちなみに、NYの暗黒裏番長ことElysian Fieldsも今年に入ってまったく同じタイトルでまるで作風の違うアルバムをリリースしていて、そちらも結構よかった。


17. Peaking Lights / 936

アルバム冒頭All The Sun That Shinesのベース・ラインが流れだした時点で傑作と確信したが、聴けば聴くほどずぶずぶハマってしまう底なし沼のようなミニマル・サイケデリック・ダブ。気だるくて、退廃的で、部屋のすみっこで腐ったバナナのような甘みもあるが、ちゃかぽこ鳴るチープ極まりないドラム・マシーンの音には覚醒作用も。あと、広がる景色が溶けるように反復していくノンビートのKey Sparrowが本当いい曲で…。Not Not Fun周辺はおもしろい。



16. Everybody Else / Wanderlust

元プッシュ・キングス! とかそういう事情は何も知らず耳にしたんですが(すいません)、強烈フック連発で今年耳にしたなかでもぶっちぎりに完成度の高いパワーポップ作。キラキラしたキーボードと曲進行が「ラジオスターの悲劇」を彷彿させる「Photograph」、鉄板パーティーチューンDifferentをはじめ泣ける曲ばかり。これとチープ・トリック『at武道館』と(来日公演もよかった)ウェリントンズの新譜が一時期のヘビーローテだった。今年はマフスも生で拝むことができたし幸せだったなー。


15. Veronica Maggio / Satan I Gatan
スウェーデンの今年5月13日付シングルチャートにアルバムの全曲がランクインし、12月現在もアデルなどと居座りつづける怪物ポップ作。元々は品のよく色っぽいソウルを得意とした彼女は、この作品でエレクトロもロックも呑みこんで大化け。どの曲も超キャッチーで、ロビン(このビデオよかった!)は評価するのにこちらは世界的にスルーなのが謎すぎる。最初のシングル「Jag kommer」は英語で"I'm coming"の意で、するどいギターリフとシンプルなトラックの産みだすグルーヴも強烈だが、指マンからピンセット、行ったりきたりを暗喩的に繰り返す卑猥なPVがすばらしく、ケイティ・ペリーの「Teenage Dream」などと並ぶ現代おセックルポップの金字塔だ(曲終盤の怒涛の盛り上がりもそういうことでしょ)。ちなみに彼女は今年で三十路。

14. Metronomy / The English Riviera

上半期によく聴いたその2。聴きすぎて今さら書くこともないが、スタイルを崩しすぎずにエレクトロの狂騒とおさらばして、ダンサブルだけどどこか黄昏た摩訶不思議な音世界を築き上げたバンド、中心人物のジョセフ・マウントという人はとても賢いんだなー、と(逆に頭でっかちの袋小路へハマってしまったように映ったのがジャスティス)。サマソニは見逃してしてしまったので、来年頭の来日公演は本当に楽しみ。

13. Twin Sister / In Heaven

前作の強みのひとつであったローファイ味を排除し、モンド/ラウンジ~ステレオラブ的な反復とディスコチックで緩い浮遊感に甘い歌心をより強調した意欲作。出だしの3曲で即死。ほんのり香るアジアン・テイストだったり、どこかいいとこ取りな小賢しさもチラつかせつつ、ずばぬけたアート・センス(このジャケもいいよなー、アナログ盤の購入を推奨)とAndrea Estellaの浮世離れした声およびルックスが反則的レベルなので文句のつけようもなく。あと彼女のtumblrも趣味よすぎ。ミンキーモモやセーラームーンが好きなのね。

12. 住所不定無職 トーキョー・ポップンポール・スタンダードNo.1 フロム・トーキョー!!! 
アイディアと引用とロマンスの宝庫だった「ベイビー!キミのビートルズはボク!!!」で虜になった身としては、輝く卑しさがスポイルされ、割と普通にロックしている『JAKAJAAAAAN!!!!!!』に(´・ω・`)ショボーンとなったが、つづく今年2枚目の"フルボリュームシングル"となる本作で王道をいく姿勢に感動してギンギンに再熱! 冒頭Magic In A Pop!!!に施されたストリングス・アレンジで明らかなとおり、もはや無職でも低収入でもないが、歌詞どおり踊りだしたくなる最強っぷり。カジヒデキやヒダカトオルもプロデュースに迎え、ひたすらイイ曲を演奏しまくるバンドは中央線界隈から東京の最前線へ殴り込み。「キスキス」はぜひBuono!にカヴァーしてほしい!

11. Eleanor Friedberger / Last Summer
過去にフランツ・フェルディナンドのアレックスと付き合ってたことでも有名なFiery Furnacesのお姉ちゃんのソロ作。アヴァンギャルド精神が逞しすぎるバンドの音の延長線上にありながら、色褪せた写真のような郷愁やSSW的な内省もチラつかせ、ようやく常人にとっての"ひねくれポップ"のラインに到達(本作がバンドの所属先であるThrill Jockeyではなく、Mergeからのリリースというのもミソ)。彼らの作品では、比較的メロディアスでとっつきやすい『EP』が一番好きだったのでこの路線は大歓迎。ややアイディア先行型の曲もあるが、それも含めて甘酸っぱくキュートにねじくれている。「Roosevelt Island」のベース・ラインとかすんばらしいよ。

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